骨の再生を促進する複合多孔質足場材料を開発
生体内の細胞微小環境を模倣し、骨再生能力を向上
2012.06.06
独立行政法人物質・材料研究機構
独立行政法人理化学研究所
独立行政法人国立成育医療研究センター
NIMS 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 生体組織再生材料ユニットは、理化学研究所、および国立成育医療研究センターと共同で、骨の再生を促進する複合多孔質足場材料の開発に成功した。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田資勝) 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (拠点長 : 青野正和) の生体組織再生材料ユニット (ユニット長 : 陳国平) は、独立行政法人理化学研究所 (理事長 : 野依良治) 基幹研究所 (所長 : 玉尾皓平) の伊藤ナノ医工学研究室 (主任研究員 : 伊藤嘉浩) 、および独立行政法人国立成育医療研究センター (所長 : 名取道也) の生殖・細胞医療研究部 (部長 : 梅澤明弘) と共同で、骨の再生を促進する複合多孔質足場材料の開発に成功した。
- けがや病気などによって骨に大きな欠損ができた場合、骨組織が本来もつ再生・修復能力には限りがあるため、多孔質材料などの足場材料を用いた再生医療が有望と考えられている。しかし、細胞親和性と力学強度にすぐれた足場材料を単一の原料から作製することは困難なため、我々はこれまで天然高分子と生体吸収性合成高分子を複合化した多孔質足場材料を開発し、骨の再生に有効であることを既に示した。ただし、足場材料のみで骨欠損を修復するのには限界があり、骨形成の誘導能力をいかにして高めるかが課題であった
- 今回の研究では、骨形成を誘導するBMP4とよばれるタンパク質を、既に開発した足場材料に加え、BMP4とコラーゲンスポンジ、PLGAメッシュの三者を複合化した多孔質足場材料を開発することに成功した。複合化によってBMP4の生理活性が失われないように、コラーゲンに結合可能なアミノ酸配列と融合したタンパク質を遺伝子工学の方法で合成した。開発した複合多孔質足場材料は、生体内のナノ構造を有する細胞微小環境を模倣したものであり、マウスに移植した状態でも骨形成を誘導する効果が持続した。
- 今回開発したコラーゲン/PLGA/BMP4複合多孔質足場材料は、大きな欠損をもつ骨組織の再生医療に役立つことが期待される。また、他の種類の生理活性タンパク質もコラーゲン結合部位を導入した後、足場材料に複合化することが可能であり、軟骨や皮膚など様々な組織の再生にも応用可能性をもつ。
- 本研究成果は、学術誌Biomaterials (バイオマテリアルズ) のオンライン電子版に近く公開される予定である。