室温で導電体から絶縁体へ急変する「スレーター絶縁体」を開発

テラヘルツ受信素子や新熱電変換材料の新素材への応用展開へ期待

2012.06.13


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMS 超伝導物性ユニット強相関物質探索グループの山浦 一成主幹研究員は、オークリッジ国立研究所の研究グループと共同で、室温で機能するスレーター絶縁体の開発に成功した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝、以下NIMS) 超伝導物性ユニット強相関物質探索グループの山浦 一成主幹研究員は、オークリッジ国立研究所の研究グループと共同で、室温で機能するスレーター絶縁体の開発に成功した。
  2. スレーター絶縁体は、特徴的な性質をもつ絶縁体として、半世紀以上昔から研究されてきた。十分な高温では金属的な性質を示すが、物質固有のある温度 (転移温度) 以下まで冷却すると絶縁体になる。従来、この転移温度は室温よりもはるかに低温であったため、学術的な研究だけで、応用展開を目指す研究はほとんどなかった。
  3. 今回、NIMSが2009年に初めて合成した新物質 (ペロブスカイト型オスミウム酸化物) が、これまでで最も高い転移温度をもつスレーター絶縁体であることが明らかになった。これはオークリッジ国立研究所の研究グループと共同で中性子回折法による実験に取り組んだ結果、判明したものである。
  4. この新物質は冷却を必要とせず、室温でスレーター絶縁体としての特性を示すため、学術的に興味深いだけでなく、さらに新素材として応用展開できる可能性がある。この新物質を起点とする研究がさらに進展すれば、これまでにない機能を有するデバイス素子や新材料を開発できる可能性がある。具体的には、テラヘルツ領域の信号を検出する固体素子や新熱電変換材料などへの適用が考えられる。今後、さらに材料化を目指した研究を推進する。
  5. 今回の成果は、独立行政法人科学技術振興機構先端的低炭素化技術開発 (ALCA) 「スレーター材料のエネルギー変換機能の研究」 (代表 : 山浦 一成) の一環で得られた。本成果は、米国物理学会の速報誌Physical Review Letters (電子版) で公表される。

「プレス資料中の図1 : ペロブスカイト型オスミウム酸化物の結晶写真 (左図) とその結晶構造の模式図 (右図) 。白丸はナトリウムイオン、赤丸は酸素イオン、八面体の中心部分にオスミウムイオンがある。」の画像

プレス資料中の図1 : ペロブスカイト型オスミウム酸化物の結晶写真 (左図) とその結晶構造の模式図 (右図) 。白丸はナトリウムイオン、赤丸は酸素イオン、八面体の中心部分にオスミウムイオンがある。