新たな超巨大磁気抵抗機構の発見

新機能磁気抵抗素子の開発へ道

2012.06.19


独立行政法人物質・材料研究機構
国立大学法人福井大学

NIMS 超伝導物性材料ユニットらの研究グループは、福井大学と共同で、超高圧合成により新しいタイプの超巨大磁気抵抗効果を示す新物質NaCr2O4を見いだしました。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝) 超伝導物性材料ユニット櫻井 裕也主任研究員、コロディアジニ タラス主任研究員、道上 勇一主幹研究員、室町 英治理事らの研究グループは、国立大学法人福井大学の菊池 彦光教授、田邊 雄一氏と共同で、超高圧合成により新しいタイプの超巨大磁気抵抗効果を示す新物質NaCr2O4を見いだしました。
  2. 磁場を印加することで、その電気抵抗が桁で変化をする物質が知られています。それをCMR (Colossal MagnetoResistance, 超巨大磁気抵抗) 物質と呼びます。既存のCMR物質はほとんどがマンガン酸化物であり、そのCMR機構もマンガンイオンの特別な強磁性金属相によるものですが、マンガン酸化物にこだわらない新たなCMR機構と物質探索指針が求められています。
  3. 本研究では(1) カルシウムフェライト型構造が1次元的な結晶構造と磁気フラストレーションを示しうる構造とを兼ねそろえていること、(2) クロムの4価イオンをもつ酸化物が特殊な電子状態を持つことの2点に注目し、新物質NaCr2O4を超高圧合成法により開発しました。
  4. 強磁性金属ではなく反強磁性半導体であるNaCr2O4でCMR効果を生じることが分かりました。磁気転移温度以下の全温度域という幅広い温度域でCMR効果が現れますが、温度や磁場に対して履歴効果を示さないといった新しい特徴を持つ新しい機構でのCMR効果です。
  5. CMR物質探索において、今までCMR効果と無縁と思われていた反強磁性半導体にも探索の目を配る必要があるという重要な示唆を与える結果です。本研究で提案された新機構は様々な遷移金属化合物の多様な構造で起こりえるものと思われ新たな物質探索指針となりえます。
  6. 本研究成果は、独立行政法人日本学術振興会の最先端研究開発支援 (FIRST) プログラム、科学研究費基盤研究A (22246083) 基盤研究C (21560025) 、及び文部科学省の特定領域研究 (19052005) の支援を受けて行われた研究です。なお、本成果はAngewandte Chemie International Edition誌 (ドイツ化学会発行) オンライン版に6月18日 (現地時間) に、掲載される予定である。

「プレス資料中の図4 : NaCr2O4の巨大磁気抵抗のメカニズムのイメージ図。Crイオン上の磁気モーメント (大矢印) は円錐面 (黄色) を回転するように並んでいます。磁場をかけると磁気モーメントが同じ方向に向き、電子 (小矢印 : 電子のスピンをイメージしています) がより飛び移りやすくなります。電子は同時に電荷も運ぶので、このことは電気が流れやすくなることを意味します。」の画像

プレス資料中の図4 : NaCr2O4の巨大磁気抵抗のメカニズムのイメージ図。Crイオン上の磁気モーメント (大矢印) は円錐面 (黄色) を回転するように並んでいます。磁場をかけると磁気モーメントが同じ方向に向き、電子 (小矢印 : 電子のスピンをイメージしています) がより飛び移りやすくなります。電子は同時に電荷も運ぶので、このことは電気が流れやすくなることを意味します。