ユーザーの要求に応じて機能を切り替えられるオンデマンド型素子
一つの素子でダイオード、スイッチ、キャパシタ、脳型記憶素子などの多機能性を実現
2012.11.15
独立行政法人物質・材料研究機構
NIMS 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校と共同で、一つの素子でありながらダイオード、スイッチ、キャパシタ、脳型記憶素子などの多機能性を有し、しかもこれらの機能を要求に応じて切り替えられるという新しい概念のオンデマンド型素子の開発に成功しました。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田資勝) 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点のヤン・ルイ博士研究員、寺部 一弥グループリーダー、青野 正和拠点長らの研究グループは、J. ジムゼウスキー教授 (カリフォルニア大学ロサンゼルス校) との共同で、一つの素子でありながらダイオード、スイッチ、キャパシタ、脳型記憶素子などの多機能性を有し、しかもこれらの機能を要求に応じて切り替えられるという新しい概念のオンデマンド型素子の開発に成功しました。
- トランジスタに代表される半導体素子は電気機器の主要部品として利用され、その性能向上を日進月歩続けてきましたが、近年、その発展にも陰りが見えてきました。電子情報用素子が今後も性能向上を続けて行くためには、新たな原理で動作する素子の開発も重要となっています。今回、我々は、ユーザーの要求に応じて機能を切り替えられるという新しい概念のオンデマンド型素子を開発しました。従来の半導体素子では、一度、素子を構築して回路内に配置してしまうと、その素子の機能を切り替えることは困難でした。今回開発したオンデマンド型素子を使用すれば、集積回路の素子数やサイズの減少、さらには集積回路の機能を必要な時に切り替えられるプログラマブル回路の開発などが可能となります。
- このオンデマンド型素子は、固体内を酸素イオンと電子が移動することができる混合伝導体を金属電極で挟んだ積層構造によって作られています。入力電気信号の大きさや頻度に依存した混合伝導体内の酸素イオンの移動や電気化学反応を利用して、混合伝導体と金属電極との界面における電気伝導特性を変化させることが可能です。この電気伝導特性の変化を利用することによって多機能性を実現させ、しかもそれらの機能性を切り替えることにも成功しました。
- 開発した素子は、従来の半導体デバイスが有するダイオードやスイッチなどの機能を持っているだけでなく、人間の脳の働きである短期記憶や長期記憶の機能をも発現させることもできます。そのため、本素子は、現状の集積回路の単なる発展だけでなく、脳型回路との融合によって次世代の人工知能の開発にも大きく寄与することが期待されます。
- 本研究成果は、米国日付2012年10月28日に米国科学雑誌「ACS NANO」のオンライン速報版で公開されました。