ナノの積木細工で高性能誘電素子を実現
液プロセスで酸化物ナノシートを自己組織化配列
2014.02.19
独立行政法人 物質・材料研究機構
NIMS 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の佐々木 高義フェロー、長田 実准主任研究者らの研究グループは、導電性および誘電性の2種類の酸化物ナノシートを積み木細工のようにサンドイッチ構造に堆積することにより、世界最小の高性能コンデンサ素子の作製に成功した。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝) 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (拠点長 : 青野 正和) の佐々木 高義フェロー、長田 実准主任研究者らの研究グループは、導電性および誘電性の2種類の酸化物ナノシートを積み木細工のようにサンドイッチ構造に堆積することにより世界最小の高性能コンデンサ素子の作製に成功した。
- コンデンサは、一時的に電気を蓄える機能を持った電子部品で、スマートフォン、パソコンなど電子情報機器の中でさまざまな形で使われている。現在、このコンデンサには、セラミックスナノ粒子からなる誘電体層と電極をサンドイッチ状に交互に多層積層した積層セラミックコンデンサ (MLCC) が利用されており、最先端の微粒子加工技術や薄膜技術による素子の薄膜化・集積化等のいわゆるトップダウン手法で小型化と高性能化を実現している。昨今の小型モバイル機器の小型、軽量、高機能化の流れの中でMLCCもさらなる小型化、高性能化が求められているが、現行方式では材料、プロセスの両面でほぼ限界に達しており、新たな材料、方式による飛躍的な性能向上・技術革新が強く求められている。
- 本研究グループでは、従来、コンデンサ素子の開発に利用されていたトップダウン手法とは逆転の発想で、独自に開発してきた分子レベルの薄さの2次元ナノ結晶「無機ナノシート」を用いた新たなボトムアップ型素子製造プロセスを開発し、世界最小の高性能コンデンサ素子の作製に成功した。誘電体層および電極層向けにそれぞれぺロブスカイト型酸化ニオブナノシート (組成 : Ca2Nb3O10-) と酸化ルテニウムナノシート (Ru0.95O20.2-) を採用することで、誘電体層および電極層のナノサイズの薄膜化を実現し、さらに室温・溶液プロセスで積み木細工のように積層することで高品位の電極/誘電体/電極 (MIM) のサンドイッチ型素子を作製した。この素子はトータルの厚みが30 nm弱と世界最小ながら、103~106 Hzの広い周波数範囲で安定かつ非常に高い静電容量 (27.5 μF cm-2) を示した。今回試作した素子はMLCCのMIM構造1ユニットに相当し、多層化が今後の課題となるが、その性能は市販されている現行のMLCCの約2000倍に相当することに加え、全て簡便、安価、低環境負荷の室温・溶液プロセスで製造できるため今後の多層化工程にも有利であり、将来の応用展開に向けて極めて有望な成果であるといえる。
- 本研究成果は、独立行政法人科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) 「ナノ科学を基盤とした革新的製造技術の創成」研究領域 (研究統括 : 堀池 靖浩) における研究課題「無機ナノシートを用いた次世代エレクトロニクス用ナノ材料/製造プロセスの開発」 (研究代表者 : 佐々木 高義) 」の一環で得られたもので、米国化学会誌「ACS Nano」に日本時間2月19日午後22時にオンライン掲載される。なお本成果は米国化学会から注目論文に選定され、同学会より同時にプレスリリースされる。