人手をかけずに使用済電子機器から「都市鉱石」を製造
発想の転換で小型分散処理に適する簡便なリサイクル手法を開発
2008.11.26
独立行政法人物質・材料研究機構
NIMS元素戦略クラスターは、「都市鉱山」と呼ばれる使用済製品からの希少金属回収を促進する小型分散処理に応用可能な簡便な手法を見出した。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 、元素戦略クラスター長の原田 幸明 材料ラボ長は、「都市鉱山」と呼ばれる使用済製品からの希少金属回収を促進する小型分散処理に応用可能な簡便な手法を見出した。
- この方式は、ボールミルの粉砕能力と粉砕特性を活用したもので、数cm角程度に粗く破砕した電子機器を分別することなくボールミルに装入・処理ことにより基板上の素子やメッキを優先的に剥離・粉化するものである。これにより希少金属成分が濃縮された1mm以下の粉末が生成され、その後工程の浮選や溶解などの処理にかけやすい「都市鉱石」を粉鉱状態で得ることができる。また残った非粉化物もプラスチック、アルミ、含銅基板がそれぞれ板状で残されるため、以降のプロセスでの選別も容易になる。
- これまでの我が国のリサイクルプロセスでは、まず解体・選別を行ってから粉砕などの処理にかけるケースがほとんどであり、いかに有効に人手をかけずに解体・選別を行うかに多くの努力がはらわれていた。それに対し、この技術は、本来製品製造側でなすべき解体設計の努力が不十分な製品群を無理して解体してやるために技術や人手を投入することを避け、混合物は混合物と割り切って一括してプロセスに投入したのち、むしろ物質自体や接合部分の物性を生かして分離させようという発想の転換を行っている。
- またボールミルはこれまで粉末製造技術としてよく用いられる手段であるが、これまでの常識を超えて粉砕限界を超える大きな処理物を挿入することで、逆に、粉砕されにくいプラスチック、アルミなどの構造材分は残しつつ、接合部やセラミックス、メッキなどの部分を優先的に離脱させ、さらにはそれら離脱物に対してボールミル本来の効果である微粉化を行っている。
- この方式はボールミルという簡単な装置を用いて出来るだけでなく、基本的に熱も水も必要としないために環境立地的制約が少なく、小型分散型で希少金属が濃縮された「都市鉱石」づくりに適している。さらに効果的実用化に向け、処理規模に応じたボールや回転の条件などの検討を民間企業と共同して進めている。
- この成果は、物材機構単願特許「電子機器粉砕物」およびリーテム社との複願特許「電子機器の粉砕方法」として申請され、12月1日にエコマテリアル・フォーラム主催、物材機構元素戦略クラスター共催で行われる「都市鉱山研究会Ⅱ」でも発表される。