直径20nmのゲルマニウムナノワイヤでの不純物分光に成功

次世代縦型トランジスタ材料の新しい評価技術の確立

2010.07.15


独立行政法人物質・材料研究機構
独立行政法人科学技術振興機構

NIMSは、シリコンに代わる次世代半導体材料として注目されているゲルマニウムナノワイヤ (直径20nm以下) において、キャリア制御のために導入したドーパント不純物の状態を非破壊・非接触で検出することに成功した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝、以下NIMS) は、シリコンに代わる次世代半導体材料として注目されているゲルマニウムナノワイヤ (直径20nm以下) において、キャリア制御のために導入したドーパント不純物の状態を非破壊・非接触で検出することに成功した。この成果は、NIMS 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (拠点長 : 青野 正和) の 深田 直樹 独立研究者らの研究グループによって得られた。
  2. 現在の半導体トランジスタ材料の主流はシリコンであり、高速動作等の性能向上のためにそのサイズは年々縮小化されている。しかしながらこのまま縮小化を進めようとしても、リーク電流の増大、発熱の問題等により材料・構造の変革なくしては、更なる性能向上は見込めない。ゲルマニウム中の電子・正孔の移動度はシリコン中に比べてそれぞれ2倍、4倍と高いため、現在のシリコントランジスタの性能を凌駕する高速デバイスの実現が期待できる。また、ゲルマニウムを1次元のナノワイヤ構造にすることで、従来の平面型ではない縦型トランジスタが実現できる。これにより、リーク電流を低減し、低消費電力化による発熱の減少、そして、現行のLSIより飛躍的に高い集積度が期待されるなど、機能・構造の変革を同時に成し遂げることができる。
  3. 微細なナノワイヤ半導体にどのようにしてキャリア制御のためのドーピングを行い、ドープされた不純物の状態をどのようにして観測するかということは大きな課題であった。本研究では、ゲルマニウムナノワイヤの成長時にドーパントとしてボロン (p型) とリン (n型) を導入する手法を確立し、均一性の高い不純物ドープゲルマニウムナノワイヤの作製に成功するとともに、ドープされた不純物の化学結合状態と電気的活性度を同時に非接触・非破壊で観測することに初めて成功した。これは高感度の検出器を備えた顕微ラマン分光装置で不純物の局在振動ピーク1)およびファノ共鳴が観測され新しい解析手法が確立されたことによって可能になったものである。
  4. 本研究は、独立行政法人科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 個人型研究 (さきがけ) 「革新的次世代デバイスを目指す材料とプロセス」研究領域 (研究総括 : 佐藤 勝昭) における研究課題「縦型立体構造デバイス実現に向けた半導体ナノワイヤの開発」 (研究者 : 深田 直樹) の一環として行われた。なお、本研究成果は、ACS NANO誌 (アメリカ化学会発行) に近日中に掲載される予定である。 (論文 : Naoki Fukata et al, “Doping and Raman characterization of boron and phosphorus atoms in germanium nanowires” ACS NANO, Volume4, Issue7, 3807-3816, 2010 )

「プレス資料中の図1 (a) ゲルマニウムナノワイヤの電子顕微鏡写真、 (b) 不純物ドーピングによるp型およびn型、および (c) ナノワイヤを利用した縦型立体構造トランジスタおよび太陽電池の応用例」の画像

プレス資料中の図1 (a) ゲルマニウムナノワイヤの電子顕微鏡写真、 (b) 不純物ドーピングによるp型およびn型、および (c) ナノワイヤを利用した縦型立体構造トランジスタおよび太陽電池の応用例