固体の真のバンド電子構造測定に成功

機能性材料の物性解明に向けた新展開 !

2011.08.19


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMS 中核機能部門 共用ビームステーションは、大型放射光施設SPring-8の世界最高性能の固体内部の電子状態を計測可能な硬X線光電子分光装置と第一原理計算という理論的手法を用いて、金属材料の代表例であるタングステンと、半導体材料の代表例であるガリウムヒ素を対象に、硬X線領域では初となる角度分解光電子分光法を用いて、固体の真のバンド分散の測定に世界で初めて成功しました。

概要

独立行政法人物質・材料研究機構(理事長・潮田資勝)中核機能部門・共用ビームステーション (ステーション長・坂田修身) の上田 茂典研究員らは、大型放射光施設SPring-8の世界最高性能の固体内部の電子状態を計測可能な硬X線光電子分光装置と第一原理計算という理論的手法を用いて、金属材料の代表例であるタングステンと、半導体材料の代表例であるガリウムヒ素を対象に、硬X線領域では初となる角度分解光電子分光法を用いて、固体の真のバンド分散の測定に世界で初めて成功しました。
本研究は、カリフォルニア大学デービス校、ローレンスバークレー研究所、エルラーゲン-ニュルンベルク大学、マインツ大学、ユーリッヒ研究センター、ルドウィグ マクシミリアン大学との共同研究です。
この成果により、様々な機能性材料の物質内部の真のバンド電子状態の測定が可能になり、新規機能性物質創成への大きな方針が示されることが期待されます。
今回の研究成果は、日本時間8月15日 (月) 午前2時 (ロンドン現地時間8月14日18時) に、ネイチャー姉妹誌のNature Materials誌電子版に先行掲載されています。

「プレス資料中の図1:タングステンの硬X線角度分解光電子分光の実験結果と理論計算(a) 室温(300 K)での測定結果。デバイワラー因子(W)が0.09と小さい場合には、バンド分散が観測されない。(b) 低温(30 K)での測定結果。W=0.45の場合には、バンド分散が観測される。(c) (b)の実験結果からバックグラウンドを除去した結果と理論計算(緑色)との比較。(d) 光電子の励起確率を考慮した理論計算。室温では見えなかったバンド分散が低温にすることで、明瞭に観測されていることが分かる。また、実験結果と理論計算の傾向が良く一致していることが分かる。」の画像

プレス資料中の図1:タングステンの硬X線角度分解光電子分光の実験結果と理論計算
(a) 室温(300 K)での測定結果。デバイワラー因子(W)が0.09と小さい場合には、バンド分散が観測されない。(b) 低温(30 K)での測定結果。W=0.45の場合には、バンド分散が観測される。(c) (b)の実験結果からバックグラウンドを除去した結果と理論計算(緑色)との比較。(d) 光電子の励起確率を考慮した理論計算。室温では見えなかったバンド分散が低温にすることで、明瞭に観測されていることが分かる。また、実験結果と理論計算の傾向が良く一致していることが分かる。