高速充電デバイス キャパシターの大容量化に成功
航続距離の長い電気自動車、自然エネルギー利用に大いなる期待
2011.09.05
独立行政法人物質・材料研究機構
NIMS 先端材料プロセスユニット 一次元ナノ材料グループは、電気を蓄える役割をする「キャパシター」のエネルギー密度を飛躍的に向上することに成功した。これは、シート状のナノ物質であるグラフェンを層状に積み重ね、その間にカーボンナノチューブを挟み込む新しい電極を開発することで実現した。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝) 先端材料プロセスユニット (ユニット長 : 目 義雄) の一次元ナノ材料グループ唐 捷 (トウ ショウ) グループリーダーおよび程 騫 (チェン チェン) NIMSジュニア研究員は、電気を蓄える役割をする「キャパシター」のエネルギー密度を飛躍的に向上することに成功した。これは、シート状のナノ物質であるグラフェンを層状に積み重ね、その間にカーボンナノチューブを挟み込む新しい電極を開発することで実現した。
- 現在、電力利用の効率化と省エネ化、再生エネルギーの効率的利用のため、ニッケル水素電池などのバッテリー開発が推進されている。キャパシターはバッテリーに比べ、出力密度が大きく急速な充放電が可能で、例えば自動車のブレーキエネルギーの大半を回収することができ、充電も短時間で完了する。さらに、耐久性に優れ長期間にわたり繰り返しの充放電が可能で、安全でもある。しかしながら、キャパシターはエネルギー密度が低く、大容量化が困難だという欠点があった。
- 唐らは、米国ノースカロライナ大学のグループと共同で、エネルギー密度を飛躍的に向上させるため、比表面積が2630m2/gと従来材料に比べ格段に大きいグラフェンをキャパシター電極のベース材料とし、併せて電解液イオンがグラフェン表面に多量に吸着できるように、カーボンナノチューブをスペーサーとして挿入したグラフェン積層を開発した。このグラフェン積層を電極に用いることにより、エネルギー密度(電極材料) 62.8Wh/kg、出力密度58.5kW/kgの高性能化を実現した。さらに電解液にイオン液体を用いることにより、155.6Wh/kgとニッケル水素電池と同等のエネルギー密度を得ることに成功した。
- 本研究で開発されたキャパシターは、エネルギー効率・省エネ効果の大きい電気自動車用キャパシター、エネルギー変動の大きい再生エネルギー利用に適しており、低コストで量産性にも優れるので、実用化が大いに期待される。
- 本研究成果は、Physical Chemistry Chemical Physics誌に近日中に掲載される予定である。