酵素に学ぶ金ナノ粒子触媒
反応物を表面捕捉する金属ナノ粒子触媒
2012.10.03
独立行政法人物質・材料研究機構
NIMS 高分子材料ユニットの三木 一司グループリーダーらは、酵素の物質取り込み機能を模倣した高活性の金ナノ粒子触媒の開発に成功した。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝) 高分子材料ユニット (ユニット長 : 一ノ瀬 泉) の三木 一司グループリーダーらは、酵素の物質取り込み機能を模倣した高活性の金ナノ粒子触媒の開発に成功した。
- 新型触媒は生体反応における触媒として生命活動を支えている酵素を模倣したものである。金属酵素は、活性中心に触媒となる金属原子を持ち、周辺を取り囲むタンパク質が特定物質を活性サイトに取り込む機能を持つことで極めて高い活性と選択性を発現している。この金属酵素の構造を、アルカンチオール分子で被覆された金ナノ粒子で模倣することで、金属酵素類似の触媒活性を実現することに成功した。
- 今回、研究グループは、金ナノ粒子表面に形成されるアルカンチオール単分子膜が、特定の長さや形の分子を取り込む、細胞膜 (脂質二重膜) に似た相互作用を持つことに注目した。この相互作用によって粒子表面に取り込まれた分子は、触媒機能を持つ金粒子表面に接触する確率が増える為、触媒反応が加速される事になる。具体的には、金粒子表面にシラン分子とアルコール分子を取り込むことで、触媒である金表面においてシラン分子が効率よく活性化される、高活性の触媒反応を見出した。
- 今回の成果は、金属酵素類似の触媒反応メカニズムが確認されており、金ナノ粒子の修飾分子を設計する事により、高活性かつ高選択的な触媒の実現が期待できる。また、水溶液中でしか安定に利用できない天然の酵素とは異なり、金ナノ粒子は化学的に極めて安定であることから、酸性・塩基性水溶液条件や有機溶媒中においても利用可能であるため、工業利用上の制約が無い。
- 本研究は、文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域「反応集積化の合成化学 革新的手法の開拓と有機物質 創成への展開」 (領域代表 : 京都大学工学研究科 吉田潤一教授、http://www.sbchem.kyoto-u.ac.jp/syuuseki/index) における公募研究「近接場増強型光化学反応の空間・時間集積化」 (平成22~24年度) (研究代表者 : 三木 一司) の一環として行われたものである。成果は、既に特許出願されており、Advanced Materials誌 (Wiley) に近日中に掲載される予定である。