鋼のナノ組織化を用いた高強度精密ねじの量産化を世界で初めて実現

部品製造工程を簡略化でき、二酸化炭素排出量50%削減が可能に

2012.10.04


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMS 材料信頼性評価ユニットは、1997年より一貫して鋼の結晶粒の微細化を研究してきたが、株式会社降矢技研、大阪精工株式会社とともに超微細粒組織線材の量産化技術を開発し、その応用として、高強度精密部品の代表であるM1.7マイクロねじの製造技術を確立した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 潮田 資勝、以下NIMS) 材料信頼性評価ユニット (鳥塚 史郎グループリーダー) は、1997年より一貫して鋼の結晶粒の微細化を研究してきたが、株式会社降矢技研 (社長 : 鈴木 由幸) 、大阪精工株式会社 (社長 : 澤田 斉) とともに超微細粒組織線材の量産化技術を開発し、その応用として、高強度精密部品の代表であるM1.7マイクロねじの製造技術を確立した。
  2. 結晶粒の直径がミクロン (千分の一mm) 以下のサブミクロン超微細粒金属は、多くの研究がなされてきたが、実用化例はなかった。その原因は、第一に結晶粒微細化によって強度は著しく上がるものの延性が低下すること、第二に、超微細粒組織をもった材料を量産する技術がなかったことである。
  3. 筆者らは、鋼のナノレベルまでの結晶粒微細化技術を開発し、高強度化に伴う延性低下の問題を克服し、高強度かつ高成形性の材料開発に成功した。さらに、その超微細粒材料の長尺鋼線材としての量産技術を確立し、超微細組織 (ナノ組織) を持った高強度精密部品であるマイクロねじの世界初の実用化に成功した。
  4. 図1に本ナノ組織マイクロねじの搭載されたスマートフォンとねじの拡大写真を示す。本ナノ組織ねじは、ねじ商社 (山一精工株式会社) を経由して、パナソニック製スマートフォンに本格採用されるようになった。パナソニック初のスマートフォンP07-C (30万台発売 2011年8月) から現行のP-07D_ELUGAに至るまで、すでに1年以上の実績を有し、ねじの累計製造個数は約600万個を超えた。
  5. 本ナノ組織ねじは、製造工程で従来製造法に比べCO2排出50%削減を可能にした。

「プレス資料中の図1:パナソニック製スマートフォンP07-Cとナノ組織を持つM1.7マイクロねじ」の画像

プレス資料中の図1:パナソニック製スマートフォンP07-Cとナノ組織を持つM1.7マイクロねじ